「もっと家庭に寄り添う支援がしたい」あなたへ。産後パートナーという働き方

- 子どもに関わる仕事が好き。
- 人の話を聴くことも好き。
- 困っている人がいたら、自然と気になる。
- これまで保育や子育て支援、福祉、家事支援など、人の暮らしに関わる仕事をしてきた。
でも、ときどき、
「もう少し、この人の暮らしそのものに関われたらいいのに」
と思ったことはありませんか。
- 保育園で、毎朝慌ただしく子どもを預けていくお母さんを見送ったとき。
- 子育て支援の場で話を聞きながら、「この人、家に帰ってから大丈夫かな」と思ったとき。
- ファミリー・サポートなどで家庭に関わり、「もっとできることがありそうなのに」と感じたとき。
あるいは、自分自身が産後を経験して、
「あの頃の私みたいな人のところへ、誰かが行けたらいいのに」
と思ったことがある人もいるでしょう。
子どもだけではなく。
家事だけでもなく。
悩みだけでもなく。
その人が毎日を過ごしている「家庭」そのものに、もう少し近いところから関わる。
そんな支援の形があります。
それが、
「産後パートナー」
という仕事です。
支えるのは「赤ちゃん」だけではありません
産後の家庭に必要なのは、赤ちゃんのお世話だけではありません。
赤ちゃんが生まれると、家庭の暮らしそのものが大きく変わります。
授乳やミルク。
おむつ替え。
寝かしつけ。
それまでなかったことが、24時間の暮らしの中に加わります。
同時に、
食事も必要。
洗濯も必要。
上の子の生活も続く。
夫婦の関係も変わる。
そして出産した母親自身も、身体を回復させている途中です。
だから産後パートナーが見るのは、「赤ちゃん」だけではありません。
赤ちゃんが生まれた、その家庭の暮らし全体です。

ごはんを作る日もあれば、赤ちゃんを抱く日もある
産後パートナーは、家庭を訪問します。
そこで必要なことは、家庭によって違います。
- 今日は、食事を作ってほしい。
- 別の日は、赤ちゃんを少し抱いていてほしい。
- 洗濯物を片づけたい。
- 上の子が帰ってくる前に、夕食を整えておきたい。
- 誰かと話したい。
「こんなことで困っている」と言えるほどではないけれど、なんとなく一人ではしんどい。
だから、
「今日は何があったら、少し暮らしやすくなりますか?」
を、その家庭と一緒に考えていきます。
決められた一つのサービスを提供するというより、今、この家庭に必要なケアは何だろう?と暮らしを見ながら関わっていく仕事です。
家事代行とも、ベビーシッターとも少し違う
たとえば家事代行なら、
料理や掃除、洗濯など、「家事を担う」ことが主な役割です。
ベビーシッターなら、
子どもの安全を守りながら「子どもを預かる」ことが中心になります。
助産師や保健師などの専門職には、
母子の健康状態を確認したり、専門的な知識をもとに相談や支援を行ったりする役割があります。
どれも、産後の家庭にとって大切な存在です。
産後パートナーが担うのは、それらの代わりではありません。
産後パートナーが大切にするのは、
産後という大きな変化の中にある家庭の「暮らし」を見ること。
家事をすることもある。
赤ちゃんに関わることもある。
話を聴くこともある。
そして、自分の役割を越える専門的な支援が必要だと感じたら、適切な支援につながることも大切にする。
一つの困りごとだけを見るのではなく、
その人が今、どんな毎日を生きているのか。
そこに目を向けながら、家庭のケアの一部を一緒に担います。
「こうした方がいい」を教える人ではない
子育て経験が長い人。
保育や子育て支援の経験がある人。
たくさんの家庭を見てきた人。
そんな人ほど、
「こうしたら楽になるよ」
「私はこうやってきたよ」
と伝えられることを、たくさん持っています。
それは大切な経験です。
でも、産後パートナーとして家庭に入るとき、
自分の正解を、その家庭の正解にはしません。
どんな子育てをしたいのか。
どんな暮らしをしたいのか。
何を大切にしたいのか。
何に困っているのか。
どこまで手伝ってほしいのか。
それは家庭によって違います。
だから、
「こうしてください」と導くのではなく、
話を聴きながら、
その家庭が、自分たちなりの新しい暮らしをつくっていくことを支える。
それも産後パートナーの大切な役割です。

「あの頃の私にしてほしかったこと」から始まってもいい
自分自身の産後がしんどかった。
だから、「あの頃の私みたいな人を支えたい」という思いから、この仕事に関心を持つ人もいます。
その経験や思いは、誰かを支えたいと思う大切な原点になります。
そして産後パートナーとして学んでいく中では、目の前のママを知ることと同じくらい、自分自身のことを知ることも大切にしています。
- 「あの頃、本当は何がしんどかったんだろう」
- 「私は、どんな気持ちを抱えていたんだろう」
- 「本当は誰に、何をしてほしかったんだろう」
当時は毎日を過ごすことで精一杯で、自分でも気づいていなかった気持ちが、学びの中で少しずつ見えてくることもあります。
そうして自分自身の経験を丁寧に見つめたうえで、
「私はこうだった。でも、目の前のこの人はどうなんだろう?」
と考えられるようになる。
自分がしてほしかったことと、目の前の人がしてほしいことは、同じとは限りません。
だから産後パートナーは、相手の話を聴き、その人が何を感じ、何を望んでいるのかを大切にするためのコミュニケーションも学びます。
近づきすぎて相手の人生を背負うのでもなく、距離を置いてただサービスを提供するのでもない。
自分と相手、それぞれの気持ちや価値観を大切にしながら、安心して関われる距離をつくっていく。
「あの頃の私みたいな人を支えたい」という思いが、学びを通して、「目の前のこの人が、その人らしく暮らしていくために、私は何ができるだろう」へと育っていく。
それも、産後パートナーとして身につけていく大切な専門性のひとつです。
「もっと家庭に寄り添いたかった」と思っていた人へ
これまで支援の仕事をしてきた人の中には、
こんな思いを持っている人もいます。
保育は好きだった。
でも、子どもを預かるだけではなく、その子が帰っていく家庭のことまで気になっていた。
子育て支援は好き。
でも、相談の時間が終わったあと、「この人の今日の夕方は、どうなるんだろう」
と思うことがあった。
家事支援やファミリー・サポートも好き。
でも、もう少し継続的に、その家庭の暮らしそのものに関わってみたい。
あるいは、
誰かを支えることは好きだけれど、今までとは違う働き方をしてみたい。
組織の中だけではなく、自分で一人ひとりと関係を築きながら仕事をしてみたい。
そんな人にとって、
産後パートナーは、
これまで培ってきた経験を捨てて、ゼロから別の仕事を始めることではありません。
今まで見てきたもの。
感じてきたもの。
学んできたこと。
人と関わってきた経験。
そこに新たな専門性を重ね、
今度は「家庭」という場所で活かしていく。
そんな働き方でもあります。

ケアが好きだからこそ、続けられる仕事にする
そして、産後パートナーという働き方でもう一つ大切にしたいことがあります。
それは、
支える人自身も、
自分を犠牲にしないこと。
「困っているママのためだから」
「子どもが好きだから」
「人助けなんだから」
そうやって、自分の時間や生活を削り続けなければ成立しない支援は、長く続きません。
ケアすることが好きな人ほど、
頼まれたら断れない。
もう少しやってあげたい。
困っているなら安くても。
と、自分を後回しにしてしまうことがあります。
でも、ケアを届け続けるためには、ケアする側の暮らしも守られている必要があります。
- 専門性を持つ。
- できることと、できないことを知る。
- 適切な対価を受け取る。
- 自分が働く時間を決める。
- 一人で抱え込まない。
- 必要なときには他の専門家につなぐ。
「誰かを大切にすること」と「自分を大切にすること」を、どちらか一方にしない。
それも、ケアを仕事にするうえで大切なことだと私たちは考えています。

「そうそう、こんなふうに支えたかった」
産後パートナーという仕事を知った人から、
「こういう支援がしたかった」
という声があがることがあります。
それはもしかすると、まったく新しい夢を見つけたというより、これまでの人生の中で感じてきたことに、
ようやく仕事としての形が見つかった
ということなのかもしれません。
自分の産後に感じたこと。
子育てを通して気づいたこと。
保育や福祉、子育て支援の現場で感じてきたこと。
「もっとこうできたらいいのに」と思ってきたこと。
その先に、家庭の中に入り、その家庭の暮らしを一緒に支えるという選択肢があります。
ただし、「支えたい」という気持ちだけで、すぐに他人の家庭に入れるわけではありません。
産後という繊細な時期に関わるからこそ、知っておくべきこと、身につけるべきことがあります。
そして、それを「仕事」として続けていくための準備も必要です。
次の記事では、「支えたい」を仕事にするには?産後パートナーとして活動するまでのロードマップを、具体的にご紹介します。


