産後どうしてあんなにしんどかった?「母親だけでは回らない」本当の理由

赤ちゃんが生まれた頃のことを振り返って、「なんで、あんなにしんどかったんだろう」と思うことはありませんか。
- 赤ちゃんが病気だったわけではない。
- 夫がまったく何もしてくれなかったわけでもない。
- 大きなトラブルがあったわけでもない。
- 周りから見れば、「普通の産後」だったかもしれない。
それなのに。
ごはんを作るだけで精一杯だった。
一日中、何かに追われているような気がした。
赤ちゃんが寝ても、なぜか自分は休めなかった。
夫が帰ってくる時間ばかり気にしていた。
誰かと話したくて仕方ない日もあった。
「少しだけ一人になりたい」と思ったあとで、そんなことを思う自分に罪悪感を持ったりもした。
そして、
「みんなやっていることなのに、どうして私はこんなにしんどいんだろう」
と思ってしまう。
でも、もしかすると。
あの頃しんどかった理由は、あなたが育児に向いていなかったからでも、要領が悪かったからでもなく・・・もっと単純に、
ひとつの家庭の中で「必要になったこと」が、あまりにも多かったから
なのかもしれません。
赤ちゃんが一人増えた。でも、増えたのは「育児」だけじゃない
子どもが生まれると、赤ちゃんのお世話が始まります。
- 授乳する。
- ミルクをつくる。
- おむつを替える。
- 着替えさせる。
- 抱く。
- 寝かせる。
- 泣いたら様子を見る。
- 体調を気にする。
- 数時間後には、また授乳。
- そしてまた、おむつ。
一つひとつだけを見れば、それほど長い作業ではないかもしれません。
でも赤ちゃんは、まだ自分で自分の暮らしを整えることができません。
食べることも、眠ることも、清潔でいることも、安心することも、そのほとんどを誰かに委ねています。
つまり、一人の赤ちゃんが生まれるということは、一人分の「育児」が増えるだけではなく、
一人の生命と暮らしを支えるために必要なことが、家庭の中に丸ごと増える
ということでもあります。

でも、それまでの暮らしはなくならない
赤ちゃんが生まれたからといって、洗濯物が出なくなるわけではありません。
お腹が空かなくなるわけでもありません。
ゴミも出る。部屋も散らかる。買い物も必要。役所の手続きもある。上の子がいれば、その子の暮らしも続いています。夫婦の生活もある。
仕事に戻る準備が必要な人もいるでしょう。
新しいことが大量に増えたのに・・・・今までやっていたことは、ほとんど減っていない。
産後の家庭では、そんなことが起こっています。

出産した母親自身も、本当は支えてもらう側にいる
もう一つ、忘れられやすいことがあります。
それは、
赤ちゃんを産んだ人自身も、大きな身体の変化を経験した直後
だということ。
身体を休めたい。
眠りたい。
ちゃんと食べたい。
痛みがあるかもしれない。
ホルモンの大きな変化もある。
初めてのことに不安になることもある。
本来なら、自分自身にも誰かの手が必要な時期です。
ところが現実には、赤ちゃんが生まれた瞬間から、「お母さん」になります。
赤ちゃんのことを考える。
家族のことを考える。
家のことを考える。
つまり産後には、
自分自身も支えてもらう必要がある人が、同時に家庭の中で最も多くのことを担う人になってしまう
ことがあります。
これでは、しんどくなるのも不思議ではありません。

産後に増えていたのは、「ケア」だった
ここで、一つ言葉を置いてみたいと思います。
それが、
「ケア」
です。
ケアというと、看護師や助産師、保健師などの専門職が行うことや、介護、病気や困難を抱えた人への支援を思い浮かべる人もいるかもしれません。
もちろん、それらも大切なケアです。
でも、人が生きていくために必要なケアは、もっと日常の中にもあります。
- ごはんを作る。
- 洗濯をする。
- 赤ちゃんを抱く。
- 子どもの顔を見て、「今日はちょっと元気がないかな」と気づく。
- 疲れている人の話を聞く。
- 家族が明日も生活できるように、必要なものを準備する。
誰かの生命と暮らしが続いていくように、
気にかけ、考え、手をかける。
そんな営みもまた、暮らしの中にあるケアです。
考えてみれば家庭では、毎日、ものすごい量のケアが行われています。
そして産後は、その量が一気に増える時期なのです。
必要なケアは増えた。でも、ケアする人は増えなかった
ここまで考えてみると、産後のしんどさが少し違って見えてきます。
赤ちゃんが生まれて、
家庭に必要なケアは一気に増えた。
ところが、
それを担う人の数は、ほとんど増えていない。
夫婦二人で暮らしていた家庭に赤ちゃんが生まれても、基本的には大人は二人のまま。
夫が仕事に出れば、日中は一人。
里帰りや祖父母のサポートがない家庭なら、なおさらです。
しかも、そのうち一人は出産直後。
それでも私たちは、「母親になったんだから」「みんなやっているから」「家族のことだから」と、家庭の中でなんとか回そうとしてきました。
だから、
「母親だけでは回らない」のは、母親の能力の問題ではなく、そもそも必要なケアに対して、担う人が少なすぎる
という見方もできるのです。
ケアが増えたなら、ケアする人も増えていい
赤ちゃんが生まれた。家庭の中で必要なケアが増えた。
だったら、
ケアする人も増えていい。
考えてみれば、とても自然なことではないでしょうか。
- 祖父母かもしれない。
- 友人かもしれない。
- 地域の人かもしれない。
- 行政のサービスかもしれない。
- 助産師や保健師などの専門職が必要なこともある。
そして、日々の食事をつくったり、赤ちゃんを抱いたり、話を聴いたり、暮らしを一緒に整えたりする人がいてもいい。
誰かに頼るのは、「母親だけではできなかったから」ではなく、
そもそも家庭の暮らしは、一人ですべてを担うには多すぎる「ケア」で支えられているものだから。
そんなふうに考えることもできます。

あの頃の自分のような人に、今度は自分ができること
自分の産後を振り返ったとき、
「あのとき、こんな人がいてくれたらよかったな」
と思い浮かぶ人もいるかもしれません。
何か特別なことをしてほしかったわけじゃない。
- 少し赤ちゃんを抱いてくれる。
- 温かいごはんをつくってくれる。
- 「今日どうだった?」と話を聞いてくれる。
- 散らかった部屋を見ても、何も評価しない。
- ただ一緒に、その日の暮らしを回してくれる。
そんな誰か。
そして、自分がその経験をしたからこそ、「今度は私が、誰かにとってのそんな人になれたら」と思う人もいます。
産後の家庭に入り、家族と一緒に暮らしのケアを担う。そんな仕事があります。
それが、産後パートナーです。
次の記事では、「もっと家庭に寄り添う支援がしたい」人へ。産後パートナーという働き方について、ご紹介します。


